■遠隔画像診断は法律・倫理上問題ない■

●遠隔医療の中で遠隔画像診断および遠隔病理診断は、対面診療を規定する医師法20条に抵触しないことが厚生省通達で再確認されました(健政発第1075号:平成9年12月24日)。その巻頭に以下の一説があります。
 『遠隔診療のうち、医療機関と医師又は歯科医師相互間で行われる遠隔診療については、(主治医である)医師又は歯科医師が患者と対面して診療を行うものであり、医師法20条及び歯科医師法20条(以下「医師法第20条等という」。)との関係の問題は生じないが、患者の居住宅等との間で行われる遠隔診療については、医師法20条等との関係が問題となる(以下省略)。』
 と表記され、医師対医師の医療補完行為は遠隔化しても問題ないとされております。(アンダーラインは著者挿入)

■医師法と医療法

【1】遠隔画像診断は医師が行う必要があるか?・・ある
■関連法令:『医師ではないものが医業を行ってはならない(医師法:第17条)。』
●医行為とは医師対患者の直接的・間接的行為です。講演会などで他の医師に対して画像の読み方を指導する行為は、医師・患者関係は成立せず、教育活動であって医行為ではありません。しかし放射線科医師が、画像診断報告書を主治医に提出する行為(診断支援)にあっては医業(医療コンサルタント業)というべきです。なぜなら主治医は通常その報告に基づき治療方針を決定するからです。従ってこの業務は医師でなければならない。

【2】医師が画像診断コンサルタント業を営業して良いか?・・良い
■関連法令:『医師は疾病の診察、治療等医行為の総てを業としてなし得るのであり、特にその行為の内容、方法等について法律の制限はない(昭和25年・2・1  医収62)。』
●医師はその資格を用いて、公衆衛生から医療相談まで健康と疾病に関係するいかなる営業行為も容認されている。

【3】遠隔画像診断支援(コンサルタント)を行うにあたり、診療所開設の必要は?・・ない
■関連法令:診療所開設許可について:『他の医師より依頼を受けて・・・血液検査・・・をなし(行い)、その結果判定するのみならば、医行為に属しないから、・・・診療所開設の手続きを要せず(昭和23・8・12 医312)。』
●私を含め複数の同業者が行っている遠隔画像診断は画像コンサルタント業であり、医師対患者関係は成立せず医行為の定義は満たさない。あくまでも医師対医師の関係であり、診療所開設の義務はない。かりに医行為であったとしても契約医療施設の非常勤医師となり、自宅勤務する形式であれば、私が診療所を開設する義務はない。

【4】遠隔画像診断での診断書送付は医師法20条に抵触しないか?・・しない
■関連法令:『医師は自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを・・交付してはならない(医師法:第20条)。』
●放射線科医師が主治医に提出する画像診断書(報告書)は医師法20条の規定する診断書(=患者ないし対外機関宛の病名診断書)ではない。つまり放射線科医師がレントゲンなどを読影する行為は、病理専門医が病理組織を観察し結果を主治医に報告することと同じであり、その診断書は直接患者に発せられるものではなく、主治医に対して発せられる報告書である。主治医はこの報告書を参考として総合診断を行う。従ってこの画像診断書を記載するに当たって、放射線科医師は患者を直接診察する必要はない。かりに画像診断書が主治医を介して間接的に患者に発せられるにせよ、放射線科の画像診断は画像=患者であり、一般医師が患者を診察することと同じ意味を持っている。過去の結核検診の時代から現在まで、放射線科医の読影行為は患者を診察せずにフィルムだけでなされて報告してきた。

【5】依頼施設は遠隔地から送られた診断書で、依頼した医療機関は保険診療における『コンピューター断層診断料(現行450点)』を請求できるか。・・できる
●CT・MRI診断はフィルムで行う義務は課せられていない。CT・MRI装置のディスプレー画面で診断しても法的問題はない。私の行っている遠隔診断は、医用画像を電送して、自宅のモニターで読影するもので、一種の自宅勤務ともいえる。なお診断書(報告書)は記載者のサインが必要と考えられ、処方せん同様FAXなどで送られた診断書に問題が発生するだろう。そこで後日記載内容は全く同一のサイン入りの診断書を郵送する。なお、今まで曖昧であったが、平成9年の厚生省通達でフィルムレス=電子保存画像だけであっても、診断料を保険請求できることが確認(追認)された。

■厚生省の遠隔医療研究班会議との整合性は?

●すでに述べたように厚生省の遠隔医療研究班で議論されている『遠隔医療』は、初診から診断・治療(処方)までの医行為全てを遠隔化して問題はないか?を議論しているのです。私の『遠隔画像診断』は、院内放射線科がネットワーク化され、送られたデジタル画像を別棟の診断室で診断することとなんら変わりません。この院内画像診断室が自宅診断室になったにすぎません。
●平成9年12月26日発表された『遠隔医療の基本指針』でも遠隔画像診断の有用性と法律との整合性が述べられ、厚生省としても強力に後押しをしています(LINKへ)。また最初の商用診断ネットである「ホスピネット社」は平成9年に9省庁関連の「情報化月間推進会議議長賞」を受賞し、まさに官民一体となってこの分野の開拓がなされています(LINKへ)。

■しかし遠隔画像診断業務はまだ、独立した医業として認められていません(=診療所として開業できない)。

●従ってこの業務でクリニックの開業はできません(その方が規制がなくてよろしい)。したがって契約医療機関の非常勤医師となり、自宅を画像診断室にして自宅勤務することになります。

■では現行の遠隔画像診断はなんですか?

●それは『主治医の下す画像診断を、専門医がダブルチェックする』ことといえましょう。その行為に対して、医療機関から『診断数に応じた報酬をいただく』という営業行為になります。要するに主治医の知恵袋=セカンドオピニオンのようなものです。


■■倫理面■■

■遠隔画像診断そのものに倫理的問題はあるか?

●本来デジタル画像を未加工で電送しますので画像の劣化は全くありません。重要なことはハッカーなどが回線に侵入して、個人情報を盗用する心配があります。従って契約者以外がこの回線に入れないように厳重な管理が必要です。私のシステムはインターネットとは完全に独立しており他者がこのネットワークに侵入することは(私の診断室に来ない限り)不可能です。なお、病院のレセプトコンピューターとも物理的に分離されています。

■放射線専門医以外が画像診断をすることの問題は?

●私はなんら問題ないと考えます。一般に放射線科医師はレントゲン・XCT・RI・MRIなど広く学んではいますが、特定の領域や特殊疾患ではその診断能力に問題があります。もちろん神経放射線科を標榜する放射線医は多いが、腫瘍診断に興味が偏重しており、神経変性疾患に詳しい方は少ないです。特定領域の画像を研究している他科医師の参加を歓迎してください。問題あるとすれば、撮影領域に含まれる他臓器病変(合併症)を見落とす可能性があることでしょう。そこで私は高名な放射線科専門医と契約し、疑診例はすべてネット上でダブルチェックを依頼しています。現在約5%がダブルチェックされています。将来は病理専門医やNMR生化学者ないしコンピューターエンジニアが共同でネット上で高度な画像解析をすることも可能です。私は近年急増する痴呆疾患の画像診断をもっぱら行ってきました。もし、新潟県に痴呆疾患のMRI診断を行う放射線医師が十分確保されれば、この業務を中止します。

■専門医・認定医の問題点は?

●専門医・認定医制度の問題点は、あらゆるところで議論されていますので繰り返しません。結局名医とは『自己の診療行為を常に振り返り、正診率・誤診率・治療成績を検証し、一定の水準を維持する医師』ではないでしょうか。
 この結論を得た後で、また違った考えも必要と気づきました。つまり医療過疎地に勤務する多忙な医師の問題です。たとえば1日50人診察し、50人とも正確な診療行為を行った医師A(正診率 50/50=100% :助けた患者は50 人)と、1日100 人診療し75人の正確な診療を行い、25人は不適切な医療を行った医師B(正診率 75/100=75% :助けた患者は75人)とではどちらが名医か? 正診率の高いAか、絶対数で勝るBか? これを考えるとまた今日も眠れません。


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