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■■撮影法Q&A■■


MRI撮影でよく話題になる疑問に答えます。

【18】ファイバートッラッキング(Fibertracking)とは何ですか。
【17】低磁場MRでもDTIはできますか、注意点は何ですか。
【16】拡散テンソル画像(DTI)・Tractographyとは何ですか。
【15】拡散強調画像とは何ですか。
【14】MRIを新機種に更新しました。でも画質が思ったほど良くないです。なぜでしょう。
【13】バランスシーケンスとはなんですか。何に使いますか。
【12】ドライブ法とはなんですか。何に使いますか。
【11】撮影時「声かけ」をした方がいいですか。
【10】老人のMRAがきれいに撮影できないのですが、どうしたらいいですか。
【9】パラレルイメージング(Philips=SENSE、GE=ASSET)の注意はなんですか。
【8】緊急MRIの適応はどんなときですか。
【7】脊椎MRIでAxialのT1Wは必要ですか。
【6】腰椎MRIで椎間板は患部3スライス連続撮影が必要ですか。
【5】頸部MRAは3D-TOFと2D-TOF、PC(phase contrast)のどれが最適ですか。
【4】脳MRA(TOF)でGdを用いるべきですか?
【3】脳MRAのMIP角度と方向の最小必要枚数は?
【2】スライスGapは必要ですか?
【1】脳MRIの撮影基準線はOMLで良いのですか?


【18】Fibertrackingとは何ですか

●FibertrackingとはMRIの拡散テンソル解析の手法の一つである。すでに【16】【17】で解説したように、6軸以上の方向について拡散強調画像を撮影すると、拡散テンソルの形を計算することができる。すでに述べたように脳の拡散テンソルは髄鞘によって形成されている。このテンソル(通常ラグビーボールのような楕円体)は立体空間で傾きをもっているので、それぞれ向き合う同士を数珠のようにつなげると神経線維を擬似的に表現できる。これをコンピューターグラッフィックの助けで立体的に表現すると神経線維を追跡できることになる。脳腫瘍や脳梗塞があったときこの病巣と運動路との位置関係を調べることができ、手術合併症や脳梗塞の予後の推定を行うことができる。また脳の変性疾患で特定の神経線維の経路の変性を調べるなどの試みがなされている。日本では東京大学放射線科の増谷ら開発したソフトが利用できる(dTVのページ)。
増谷他,MR拡散テンソル画像のTractographyにおける拡散異方性に基づくTracking方向決定法の改善,日本医用画像工学会大会,(CD-ROM予稿集), 東京,2002

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【17】低磁場MRでもDTIはできますか、注意点は何ですか。

●低磁場でも工夫して3軸撮影をすれば3DACはできます。ただし時間がかかります。日立0.3テスラ(AIRIS-U)で検討したのですが、1軸2.5分必要で、3軸(+b=0)では10分を要しました。テンソルのすべての成分の解析は6軸以上の撮影が必要で高磁場MRで高速撮影を行う必要があります。最も重要なことは、頭部が傾いた場合にはこの傾きを考慮し、脳構造を基準として左右・上下・前後のMPG軸を調節しなければならない。PhilipsのMRでは自動的に補正してMPGの方向を決定するが、日立0.3ではその機能はなく、マニュアルで変更しなければならない。要するにDTIを行うときはMRの機械軸に対して傾かないように正確に頭部を固定した方が良い。

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【16】拡散テンソル画像(DTI)とは何ですか。

●DTI (diffusion tensor image)ないしTractgraphyとは複数の拡散強調画像から拡散テンソルを画像に表す方法である。ではテンソルとは何でしょうか。テンソルとはベクトルに作用して、その方向や大きさを規制する定数である。定数といっても立体空間では3次元の広がりを持ち、行列として表せる(大学の高等数学レベル)。簡単に説明すると、川の流れはベクトルであるが、その流れを規制する川底や堤防の形はテンソルである。水道の水はベクトルであるが、その方向を規制する水道管はテンソルである。ストローで水を吸うときストロー内の水はベクトルだが、ストローの形はテンソルである。ミクロの世界に話を戻そう。脳や脊髄では水の拡散は小さなベクトルだが、それを規制するテンソルは髄鞘であることが知られている。つまり拡散テンソル画像とは、脳や脊髄の神経線維(髄鞘)の方向や拡散を規制する強さを画像に表す方法である。テンソルそのものにも多くの種類(表現方法)があるが、3DAC(カラーマップ)とFA (fractional anisotropy)が重要である。詳細は学会発表のスライドを見てください(萌気園のホームページ)

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【15】拡散強調画像とは何ですか。

●臨床MRIで観察しているのは水の拡散現象である。小学生の時、理科の実験で水滴の上に花粉をかけて顕微鏡を見たことがあると思う。この時花粉は細かいジグザグ運動をしている。これをブラウン運動と言うが、水の分子のミクロの動きを花粉を通して観察していたのである。コップの中の水も同様に前後左右上下に自由にブラウン運動している。しかし人体、特に脳や脊髄の水は細胞や神経線維の働きで拡散運動が制約されている。
●MRIで非常に強い傾斜磁場をかけるとこの水の拡散に依存した画像を得ることができる。拡散現象はベクトルであり方向と大きさを持っている。したがって傾斜磁場のかけ方によって、X・Y・Zなどの特定の方向の拡散の大小を画像に表現できる。
●拡散強調画像の最も良い適応は脳梗塞超急性期診断である。脳虚血後十数分で拡散の低下が生じ、画像上高信号領域として明瞭に観察できる(ミニレクチャーへ)。その他ある種の脳腫瘍(デルモイドなど)の発見や腫瘍と膿瘍の鑑別にも有用である。

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【14】MRIを新機種に更新しました。でも画質が思ったほど良くないです。なぜでしょう。

●MRを新機種に更新した場合何が最も変わったかというと、第一に傾斜磁場強度でしょう。またコイルの性能も良くなったと思います。しかし思ったほど画像が良くない場合も多々あります。それは各社とも患者さんで十分検討をしていないことにあります。正常ボランティアできれいに撮影できても、実際の患者さんでは無理があることもあるのです。特にコイルの固定方法は各社とも全く本腰を入れていないです。ハイテクを使いこなすには意外とローテクが重要なのです。
●T1強調画像が思ったより良くない場合は、S/Nの改善の結果血管や髄液のGhostが原因のことがあります。この場合はプレサチレーション(SAT)を上手に入れましょう。また高磁場で白質・灰白質の分離にはFA(フリップ角)を70度前後に下げた方が良いです。
●T2強調画像が眠いような画像の場合があります。これはEcho factorが大きいためにMTC効果が入り、白質・灰白質の境界が不明瞭になるためです。Echo Factorを下げてみましょう。スライスギャップも20%は必要です。スライス選択方式はジグザグを選んでいますか。
●S/Nが上がったのに256*256画像が設定されている場合があります。256*320程度にMatrixを上げて高精細画像を得てみてください。
●折れ返しが無い部位において、折れ返し予防機能(antiwarp)を入れていませんか。経験ではこの機能を入れると画像のsharpnessが低下します。

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【13】バランスシーケンスとはなんですか。何に使いますか。

●バランスシーケンスとはFISP系のグラーディエントエコーにおいて、励起パルスをかけ続け定常状態(ballance)を得て強いエコー信号を得る手法である。最初に開発したシーメンス社はtrue FISPと呼んだが、後にBallanced field echo(BFE)として各社が採用した。特徴は高いS/NのT2/T1強調画像が得られるが、見かけはT2*強調画像に見え、水と組織の境界が非常によく分かる。欠点は磁場の不均一性によってaritifactが大きくなることである。
●使い方としては脳槽水画像やMyelographyないし心臓冠状動脈撮影などに用いられる。大きなFOVの領域は磁場の不均一性で画像が劣化するので、限定した領域の観察に用いるのがよい。我々は内耳脳槽撮影と頚部MR Myeloに用いて良好な結果を得ている。

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【12】ドライブ法とはなんですか。何に使いますか。

●ドライブ法とは2Dないし3DのT2強調画像で撮影枚数が少ない場合、TRの後半はスピンの磁化の回復を待つ無駄な時間が生ずるが、磁化を強制的に回復させるパルスを加えて、TRを1/2程度にし撮影時間を短縮する方法である。この結果体動や流体による画像の劣化を防ぐことができる。欠点はS/N低下であり、積算回数を通常撮影より+25%くらい増加させる必要があるが、それでも時間は短縮できる。
●最も良い適応は脊椎の矢状断撮影である。この部位は撮影枚数が少ないのでドライブを用いて時間短縮すると、体動の影響も少なく髄液のghostも押さえられる。
●またMR水強調画像はMRCPやMR-UrographyあるいはMR-Myelographyとして盛んに利用されている。内耳でも同様の手法で蝸牛・三半規管の観察ができる。しかし微細な観察を必要とするため1mm前後の薄いスライスが必須で、S/Nを上げるため長時間撮影が必要であり、体動が画質を悪化させる欠点があったが、ドライブ法を用いると短時間に良い画像が得られる。実例はミニレクチャー2003/03へ

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【11】撮影時声かけをした方がいいですか

●低磁場MRでは不安の有無にかかわらず声をかけるべきですが、高磁場MRでは最初に説明し撮影が始まったら動かない限り、そのまま早く終了するべきです。その理由は、低磁場では1つの撮影が3から4分と長時間であり、意識して動かないようにした方がよい結果を得ます。しかし高磁場では1つの撮影が2分以下ですから、動いた場合は同じ撮影を繰り返した方がよい結果を得ます。もちろん痴呆患者などは声をかけることが逆効果になって「寝た子を起こす」ことになり何もしない方が良いこともあります。

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【10】老人の頭部MRAをきれいに撮影するには

●最も普及している頭部MRAは3DTOFです。この方法は脳の血流速度の画像です。マルチスラブ法では短いTRの時間間隔に、どれだけの新しい血流がそのスラブ内に入るかによって画像が決まります。流速が早いほど多くの血液がスラブ内に前進(流入)します。早すぎると手前の血管が抜け落ちます(頚部血管に3Dが使いにくい理由)。遅いとスラブの一部にしか新しい血液が入り込みません。成人と高齢者(おおむね70才以上)では脳の血流の速度に大きな差があります。老人では動脈硬化の結果、流速が遅いですし、血管も蛇行しており、何度も同じスラブ内を通過するので、実質的にスラブが厚くなったと同じ効果になります。従って成人の条件で老人の脳血管を撮影すると末梢血管が観察できないことが多いです。太い血管でもあたかも狭窄や閉塞のように表現してしまいます。私は高磁場・低磁場を問わず、成人用(69才以下)のと老人用(70才以上)の条件を2つ作るべきと思います。
 メーカーの初期設定は成人向けですから、この条件を次の用に変化させます。
1)再構成Matrixをやや粗くし空間分解能を下げてS/Nを高める。
2)1つのスラブの厚さを薄くして、総スラブの枚数を増加させ、撮影領域は同じに保つ。この結果撮影時間はほとんど同じになります。
3)老人は脳底部や眼窩の脂肪が多くなりますので、TEを水・脂肪のOpposeに設定し脂肪による画像の劣化を最小限にする。またMTCはoffとする。
 現在の画像に満足している場合は、どれか1つの変更で良いでしょう。老人でも成人でもきれいに撮影している場合は、成人の場合はもっときれいに細かく撮れる条件があるということです。実際に成人と老人用のMRAを最適化した研究会発表のスライドを萌気園のホームページに掲載してあります。各メーカーのインストラクターにこのことを教えたら「なるほど」と合点しておりました。

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【9】パラレルイメージングの注意点について

●パラレルイメージングとは複数のコイルを用いてその感度分布の差を利用して、あえて折り返しがでるような短縮撮影を行い、重なった信号を元に戻すことによって正しい画像を得る方法です。最も重要なことはコイルの位置情報で画像を作りますので、コイルが変形しないように撮影する必要があります。つまり頭部コイルは通常固いコイルですので問題ありません。体幹コイルで心臓を撮影する場合、呼吸を止めなければなりません。さらにコイルの感度マップを得るプレスキャン時の呼吸停止(横隔膜)位置と、実際の撮影の時の呼吸停止位置とが一致している必要があります。腹部臓器に用いるほとんど適応はないと思いますが、用いる場合はやはり息止めが必要でしょう。もし自由呼吸下で行う場合には、コイルと腹部の間に固い円筒形のスペーサーをいれる必要があります。次に重要なことはFOVと%FOVです。はじめから折り返しがある条件では撮影してはいけません。あくまでも折り返しのない大きなFOVで撮影しないと、画像の中央にBFA(backfolding artifact)がでます。ではパラレルイメージングの適応はなんでしょうか。第一にsingle shot EPIで局所磁場の不均一によるArtifact(歪み)がでる場合、パラレルイメージングで位相エンコード回数を減じることで、歪みの少ない撮影が可能です。また心臓のように空間分解能は低くても、超高速で撮影する必要がある場合にも適応になります。また感度のよい頭部コイルで早くMRAを終了する場合や、MR-DSAなど時間分解能をあげる場合も適応です。

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【8】緊急MRIの適応はどんなときですか。

●答え:X線CTと比べてMRIの救急適応は少ないです。MRの性能によっても答えが異なります。進行性脊髄障害(脊髄血管障害など)が疑われるとき緊急撮影が必要です。心臓血管領域では解離性大動脈瘤の診断にMRIは有用ですので、疑われるときは緊急MRIを行います。脳血管障害・頭部外傷などは全てX線CTの緊急適応です。最近はFLAIRでクモ膜下出血の早期診断の知見が確立し、また拡散強調画像での急性期脳梗塞・脳出血診断ができるようになりましたので、最新MR機を導入した施設ではMRの緊急検査が増加しています。

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【7】脊椎MRIでAxialのT1Wは必要ですか。

●答え:ルーチン撮影では不要です。T2Wまで十分です。ただし血腫・腫瘍診断を行う時、ないし造影剤を用いたときは追加すべきです。

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【6】腰椎MRIで椎間板は患部3スライス連続撮影が必要ですか。

●答え:矢状断が椎間孔まで十分撮影されている場合や3Dで冠状断が撮影されるならば不要です。3スライス撮影ではGapが入りませんのでS/Nが低下し、結局神経根と椎間板の詳細な観察は困難となります。

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【5】頸部MRAは3D-TOFと2D-TOF、PC(phase contrast)のどれが最適ですか。

●答え:難しい問題です。撮影目的と各施設のMR機の性能に依存します。一般的には形態観察には2D-TOFがもっともS/Nが良いことと、血管壁境界を反映しますので、頸部エコーと比較も可能であり、第一選択でしょう。しかし人体の動きによるギザギザ(Jaggy)が入りますし、VAの上端は屈曲しており血流が反転(上→下)している場合があり、2Dであたかも欠損しているように見えることがあります。従って、血流の有無を確実に診断するにはPC(3方向)が最適です。3D-TOFは一般に行いませんが、若い人で血流速度が早いときは冠状断できれいに撮れることがあります。最近普及してきたBallanceFFEは頸動脈分岐部の観察に最適と考えます。

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【4】脳MRAでGdを用いるべきですか?

●答え:ルーチンにGdを用いるのは邪道です。Gdを用いると確かに末梢まで見えるのですが、MRAは本来無侵襲で行うべきです。またMRAは流速に依存した機能画像の側面があります。どこまで見えるかによって脳循環のよしあしを推定できます。なお、初回のMRAで異常・正常の判定困難な場合で、通常のアンギオができない症例では、Gdを用いて再検することはむしろ推奨されます。この場合もGdは通常の使用量の半量で十分です。腫瘍と血管の関係を見る場合も用います。

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【3】脳MRAのMIP角度と方向の最小必要枚数は?

●答え:脳MRAの回転方向は3軸(X=R-L、Y=A-P、Z=H-F)あるわけですが、Z軸については180度回転で十分です。YとZは90度くらい行えばよい。回転角度は視差(7度)が最適ですが、枚数が多くなるので我々は、(180/14=)13度で、Z軸は15ないし12枚、Y・Z軸は各6枚を行っています。

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【2】スライスGapは必要ですか?

●答え:通常の2D撮影ではスライスgapをつけるべきです。私もこの問題には長年悩みました。種々のMR機で検討した結果、Gapによる所見の見落としはほとんどありません。それよりもS/Nの良い画像を得るべきです。特に高速SE(FSE)ではMT効果のため脳実質の信号が低下します。Gapをつけることで改善されます。Gapは通常20%前後つけます。しかし細かい観察を目的として3D撮影を行う場合(通常2mm以下のスライス厚)では当然Gapは不要です。最後に最近開発されたバランスフィールドトエコー(BFE)は、連続励起による撮影であり、スライスギャップがあっても無くてもスライスが重なってもS/Nは同じである。

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【1】脳MRIの撮影基準線はOMLで良いのですか?

●答え:MRIの撮影基準線はOML(CML)ではいけません。AC-PC lineとすべきです。ACとは前交連PCとは後交連のことです。OMLすなわちOrbito-Mietal LineはX線CTが普及した1970年代に、側頭骨のアーチファクトをいかに減少させるかという問題に対して、最終的に用いられた撮影角度なのです。頭部CTにせよMRIにせよ、本来観察する対象は脳ですから、脳実質の解剖構造を基準に撮影するべきなのです。その結果、MRIでは脳基準線としてAC-PC lineが広く用いられるにいたりました。なお角度はAC-PCに平行ですが、基準点は我々は乳頭体としています。その理由は病理解剖の基準切開点であること、神経内科疾患で乳頭体の観察が重要であるからです。
 もちろん、SPECTやXCTなどOMLで撮影した画像と厳密に比較するときにはOMLで撮影します(詳細は撮影法へ)。

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その他基本事項で質問あればメールをください。なおNMRスペクトルやFunctional MRIは経験乏しく答えられません。